エンターテイメントのコスト、あるいはビジネスチャンス
2018-08-20 15:35 ノゴエイハヴィ、ヤスダ・ハドカ
IGC主催のアライアンストーナメントが今年も終わりを告げ、星団中の何十億もの人々が見守るなか、バイドラ・リロルデッド(Vydra Relolded)が華々しい勝利を手にした。アライアンストーナメントは多くの人々にとって、友人との親交を深めたり、あるいは賭けを楽しむ良い機会だが、オラルム・シモルカーにはビジネスチャンスとなる。
シモルカーはシモルカー・クリーニングソリューションズ社のCEOにして共同設立者だ。会社は独立ゲーミング委員会と契約し、第16回アライアンストーナメントの試合会場から残骸と死体を回収する業務を請け負っている。大抵の人間がぞっとするような仕事かもしれないが、SCS社の従業員にとっては日常業務でしかない。
「まぁ、将来の夢として人気を集めるような仕事ではないでしょうね。私も本当はフォークリフトの運転手になりたかったんです」
金曜の夜、シモルカーは忙しいスケジュールの合間を縫って「ディス・イズ・ザ・ステート」のインタビューに応じてくれた。
「宇宙空間で死体を回収するのは誰でもできることじゃありません。自分の手を汚すことを厭わない人間や、死者へ敬意を表することを忘れない人間こそ適材だと言えます」
トーナメント反対派の多くは、大会が魅力的とは思えない理由の一つとして人命の損失を挙げているが、この論点は最近になって再び注目されている。ティエリイェブ星系の賭博業者「バッドテイスト・ベッツ」が死者を賭けの対象にしたことで反対デモを招き、最終的に暴動事件へと発展したためだ。
「ティエリイェブの人が怒るのも無理ないですよ。いや、暴動を起こしていいってことじゃありません、もちろん。でも気持ちは分かります」
シモルカーは語る。
「回収した死体は必ず丁寧に扱うようにしています。言うまでもないですが、もし私の従業員がこんな賭けに参加してたらタダじゃおきませんよ! どのみち、IGCと交わした契約には倫理規定や賭博関係の反インサイダー規定がありますから」