インタキ僧侶がクーニッド王国で「失われたイダマ」を発見と主張
2018-08-31 22:29 アマー公共ニュース、ザラ・セリル
クーニッド発-インタキの道、あるいはイダの信徒たちは、ある「転生した」イダマの行方を長年にわたって掴めずにいた。だが、一人の僧侶がイダマをクーニッド王国で発見したと主張している。
インタキプライムのイダ僧院の僧侶であるワフネーク・エリロンは、シーヴァディン・コンステレーションを旅行中に行方不明のイダマを見つけたと訴えている。エリロンは先月初め、クーニッド王国ベジラ星系の貴族、アタジル・クファイル男爵が所有するピュアフェイスズ・ハーベスト号において、アイロエア・エン・ワロという名のインタキ奴隷と出会った。突飛な話に聞こえるが、エリロンによれば、エン・ワロにはイダマである特徴がいくつも見られるのだという。
エリロンはこの発見を受けて、クファイル卿からエン・ワロを買い取ろうとした。だが、クファイル卿はエン・ワロを売ることを拒み、エリロンが「明らかに間違っている」と告げた。現在、エリロンは取引記録や懲罰記録が存在しないことを理由に、クファイル卿がエン・ワロを違法に入手したのだと主張している。告発されたクファイル卿は疑惑を強い言葉で否定し、逆にエリロンの行為を「国外の宗教的植民団の手先による違法な宣教活動」だと非難している。
イダマとは技術の力を借りずに転生できるとされるインタキ人のことで、その数は極めて少ない。イダ思想の信奉者たちによれば、ニューエデン全体でも500人程度が存在するのみだ。信徒たちの話では、YC99年、インタキプライムの高齢のイダマが老化にともなう合併症で死去した。彼女は亡くなる前、インタキプライムから遠く離れた土地に転生するつもりだという遺書を残しており、信徒たちはイダマが異国の苦しみを学ぼうとしていると考えた。
転生後のイダマの身体的特徴はいくつも書き残されていたが、信徒たちは彼女を見つけることができず、捜索は最終的に中止され、イダマの系統が失われたと宣言された。このような経緯もあり、エリロンによるイダマ発見の報はインタキプライムのイダ僧院をおおいに驚かせた。
エリロンはイダマの遺書の内容に触れ、鎖骨部分に生まれながらの痣があるなど、エン・ワロには予言された身体的特徴がすべて揃っていると主張。エン・ワロの正体を確かめる「様々なテスト」を行うためにインタキプライムへ連れて行こうと考え、クファイル卿に買い取りを申し出た。
クファイル卿はACNに対し、秘書官として資産や日々の活動を管理しているエン・ワロの価値を説明したうえで、エリロンの主張が彼女をひどく苦しめたと証言した。アイロエア・エン・ワロはクーニッド王国方式の経頭蓋マイクロコントローラーを装着しており、過去の記憶はなく、自分が奴隷であることに気づいてすらいなかった。エリロンが執拗にエン・ワロを問い詰めたため、クファイル卿は彼女の苦痛を和らげるためにマイクロコントローラーを調整しなければならなかったという。
エリロンはインタキに戻ると、クファイル卿がエン・ワロを入手した経緯に関する調査結果を発表した。彼の報告によると、エン・ワロは奴隷家系の出身であるとされているものの、そのような記録はなく、奴隷化につながるような懲罰記録も存在しない。さらにエリロンは、クファイル卿が「非常に急いで」エン・ワロを購入したようだとも指摘している。イダ僧院は当初は懐疑的な姿勢を見せていたが、現在はエリロンの調査によって確信を得ているとのことだ。
イダ思想の指導部はイダマ発見についてインタキ議会へ報告し、ガレンテ連邦上層部に行動を求めている。クーニッド王国当局は「涜神的な世迷言にもとづくガレンテの干渉を受けて」クファイル男爵の権利を侵害するなどありえないと一蹴している。宮廷侍従長府は、この問題は「帝国のクーニッド王国、その王室の権威内で起きたこと」と言うに留めた。