女帝カティズ1世がハイデラン勅令を廃止、領土と軍事の大規模な再編を発表
2019-09-27 17:52 スコープ、リナ・アンバー
アマープライム、ダム・トーサッド発-女帝カティズ1世は戴冠3周年を迎え、アマー全土へ向けて「信徒への演説」を行った。女帝は演説の中で「ハイデラン勅令」の廃止を宣言し、「枢密院の皇家が監督する国土と領地」を再編することを命じた。
ハイデラン勅令とは、YC105年に当時の皇帝ハイデラン7世が発した勅令で、宇宙空間における軍事力を帝国海軍のみに制限する内容だった。その効果は発布された当初からかなり幅があったが、女帝ジャミル1世の在位期間中に大きく存在感を削がれていた。勅令の廃止によってすべてのアマー貴族は宇宙戦力を保有する権利を回復し、宇宙空間への展開も許されるようになる。あらゆる貴族に恩恵をもたらす決定だが、YC110年にガレンテ侵攻事件を起こして艦数制限が課せられていたカドール家にとっては、特に重大な展開だといえるだろう。
しかし、最も大々的に発表されたのは、帝室と皇家が管理している国土と軍事機構に関する政策だった。女帝は「パックス・エ・キリジ・ド」、あるいは「2本の剣の平和」という著作で自身の思想を述べ、演説ではアマー帝国の将来構想のうち、鍵となる要素を抜き出して語りかけた。
今回発表された政策は、アマー帝国を皇家が監督する「軍管区」に分割するというものだ。
スローン軍管区: スローンワールズ、帝室直轄地ノーゴー
アーディシャパー軍管区: ドメイン南部、ディレリック、反乱地域南部
カドール軍管区: カドール、ジェネシス北部
クーニッド軍管区: クーニッド、アリディア
コルアゾール軍管区: コルアゾール、ジェネシス南部
サルム軍管区: ドメイン北部、ブリークランド、ディボイド、反乱地域北部
タッシュムーコン軍管区: タッシュムーコン、ヤケムヒ・カシャグ開発区、プロビデンス辺境領
六皇家当主は「軍管区元帥」に指名され、「帝室以外の命令を受けない、各軍管区における最高指揮権」を与えられている。女帝自身は「スローン軍管区元帥」にあたるが、現実には宮廷侍従長が指揮権を行使する形になるだろう。スローンワールズに存在する古くからの領地や不動産については、宇宙防衛に影響がないかぎり、今までの状態を維持される。
女帝が演説で概説したように、軍管区元帥たる皇家当主は「各々が有する艦艇と臣民を通じて、監督下の国土と領地を自ら防衛する」ことが期待されている。軍管区に組みこまれた各地の貴族たちは、「各々の領土領民について適切な防御手段を確保し、元帥と主君の法的指揮に従うため、必要なすべての措置を講じる」よう命じられている。
パックス・エ・キリジ・ドの全面的な導入により、アマー帝国の領土運営は大きく変貌する。これまでは多くの星系の指揮系統が不明瞭で、領主としての曖昧な責務が課されていた。今後は皇家の元で封建的にも軍事的にも一貫したシステムが構築され、指揮権者の皇家を帝室が束ねるという形をとる。複雑な状態になっていたアリディア、ブリークランド、ディボイド、ジェネシスの領地も整理されるが、今回の再編で利益を得たのはカドール家、クーニッド家、コルアゾール家、サルム家のようだ。
とはいえ、アーディシャパー家はアマター自治領から手を引くよう求める声をはねのけ、ドメインの領地を死守することにも成功した。アーディシャパー家がトリグラヴィアンやブラッドレイダーの攻撃に対処し、アマター自治領をよく防衛したことも同家の立場を強化したものと思われる。より商業志向のタッシュムーコン家も、ドメインの小規模な開発地域を獲得した。苦々しい思いをしているのは、複雑に絡みあった封建関係を活かし、はっきりした立場をとっていなかった小貴族たちだ。軍管区制の一部となった彼らは、六皇家のいずれかに明確に臣従することとなった。
アマー帝国の強力な官庁によって管理されている国家機関や行政機関は、今回ほとんど言及されていないように思える。宰相府や保安省などの帝国全体で活動する組織については、その権限が再確認された。軍務省は「神聖アマーの防衛が適切かどうか調査し、準備の不足を帝室へ報告する」権限を女帝から直に与えられている。帝国海軍は新たな領土区分と指揮系統に従い、その戦力を軍管区艦隊へと再編成中だ。聖テトリモン教団はアーディシャパー卿とサルム卿の推薦を受け、帝国各地の異端者や反逆奴隷を探し出すよう、改めて命令を受けたと伝えられている。
観測筋はこれらの政策について、トリグラヴィアンの侵略による重圧と費用負担が原因だろうと容易に推測してみせた。アマーの国土は広く、トリグラヴィアンの攻撃もそのぶん激しいものになっている。カルダリ代表取締委員会は今回の動きについて、「トリグラヴィアンに対するCONCORD構成国の戦いに何が必要かを考慮した、合理的な措置」だと歓迎する公式声明を発表した。
ミンマター共和国部族会議はこのニュースを「アマー帝国で超好戦的な勢力が全面勝利を収めた」と表現し、アマーやアマターとの国境星系を増強するために任務部隊を派遣した。ガレンテ連邦は公式に反応しておらず、ガレンテ海軍はガレンテ・アマー国境地帯のトリグラヴィアンについてアマー当局と調整を進めている。