アマター自治領領事が貴族に叙される アーディシャパー家とサルム家は式典に合わせて会談
2019-11-08 13:00 スコープ、リナ・アンバー
◆エクロス・サラーフ領事、ジャブラン領主として初のアマター人貴族に
ディレリック、タヌー発-今日のアマター自治領は喜びに沸いている。アーディシャパー家当主アリム・アーディシャパーが、エクロス・サラーフ領事をエシュター2、ジャブランの貴族に叙すると宣言したのである。サラーフ領事は民族的にはネファンター人で、帝国史上初のアマター人貴族となる。高位のアマター人は以前から自治領内で下級貴族のように扱われていたが、正式に貴族の身分が与えられることはなかった。
アーディシャパー卿はタヌー2での歓迎式典に出席し、公開演説中にこの驚くべき発表を行った。当初の予定では、演説は女帝カティズ1世がサラーフ領事の聖座会入会を認めたことを記念するためのものだった。式典にはサルム家当主アラハ・サルムも出席しており、隣接する領地や軍管区間の協力についてアーディシャパー卿と会談した。
YC111年、「長老戦争」をきっかけに故ヨニス・アーディシャパー卿がアマター再建を担うと、自治領にも帝国本土の貴族制度が導入され始めた。それまでのアマターでは、半ば独立した階層制を成すアマー人貴族とアマター人支配層が入り混じっていた。この旧来の社会制度が改革の対象となったため、アマター人として帝国に従うネファンター人のあいだでは、彼らが完全な従属階級に落とされるのではないかと懸念する声が相次いでいた。
長老戦争後のアマター人支配層は不安定な立場に置かれた。戦争では多くのネファンター人指導者がアマーに反逆し、ミンマターへの亡命を選んだからだ。しかし、ヨニス・アーディシャパー卿がYC111年後半にエクロス・サラーフを領事に指名すると、アマター人の立場は安定を取り戻した。生まれながらのアマター人が領事に任じられたことで、アマター人支配層は自分たちの土地や奴隷が没収されることはないと安堵したのである。とはいえ、戦争中の亡命劇により、親アマー派ネファンター人がより高位に上る機会が永遠に失われたのではないかという恐れは消えていなかった。今回、サラーフ領事がジャブランの貴族に取り立てられたことで、ついに不安や心配が一掃され、アマター全土は祝祭ムードに包まれた。
カドール家やクーニッド家に連なる「純粋主義的」な貴族たちは、カハー星系やアルカブシ星系、テベカ星系で発生した奴隷反乱を背景として、こうした動きに反発している。非純血アマー人の貴族は血統や信仰を証明しておらず、「破壊的な性格」が目につくというのが彼らの主張だ。代表的な批判者の1人であり、クーニッド王の全権代理人でもあるファバイ公爵アラル・チャーケイドは、アマターに対するアーディシャパー家の接し方を「極めて寛大」と表現し、「劣等種」に権力を与えることはアマーの将来を脅かすと警告している。
アマー政治の観測筋は、アーディシャパー卿は今回の決定を通して、批判者へ激しい拒絶を突きつけたのだろうと見なしている。ある経験豊富な外交官はサルム卿が式典に出席した事実を指摘。これはエクロス・サラーフに対するカティズ1世の高い評価を示し、「サラーフの貴族叙任について公に異を唱えることを不可能にするもの」だと解説した。記者からは、反乱を起こす奴隷へ譲歩するために貴族叙任を決めたのかという質問も飛び出したが、アーディシャパー家は回答を拒否している。
◆アリム・アーディシャパー卿とアラハ・サルム卿がアマーの安全保障と紛争宙域について会談
タヌー2、領事館発-アリム・アーディシャパー卿とアラハ・サルム卿が初の「元帥会議」を開いた。会談では両家や近隣の領地、軍管区に関する事柄など、様々な問題が議論された模様だ。最も注目すべきは、カティズ1世の教書「パックス・エ・キリジ・ド」にもとづく領土・軍事再編命令を受けて、アーディシャパー家とサルム家がアマー・ミンマター紛争宙域に対する責任を共有している点である。
主な戦場はサルム軍管区に含まれているものの、ヘイマター紛争宙域の重要拠点はアーディシャパー軍管区が責任を持つことになっている。アーディシャパー家が監督するアマター自治領の戦略的位置づけを考えれば、両家の軍事力が連携することの重要性はさらに強調される。元帥会議には帝国海軍の参謀将校や、第24次帝国十字軍の提督たち、さらにアーディシャパー家とサルム家に雇用された傭兵部隊の指揮官も出席。昨日はセイカル氏族がフオラ6のHZO精錬所コロニーを襲撃する事件が発生しており、会議では対応策の調整が緊急議題として取り上げられた。
2人の元帥は両家の領地だけでなく、アマー帝国全体の安定と国内治安について話し合ったことが分かっている。サルム卿はかねてより帝国保安省の改革を求めてきたが、アーディシャパー卿はこの主張に応じ、国内治安に関する覚書へ連名することを認めた。また、聖テトリモン教団はアーディシャパー卿の要請に応え、教団が持つ強力な反乱鎮圧艦隊を両家の「対異端作戦」へ出動させることに同意した。
カティブ・オラカル・ゼル・サルム卿とエクロス・サラーフ領事による共同説明会では、懲罰部隊である第1贖罪者旅団が通常部隊に再編されることが発表された。タヌー第33親衛連隊とサスタ第14工兵隊で構成される領事館第19旅団も正式に懲罰任務から解放され、標準的な6年任期の自由民部隊としてアマター軍に編入された。
共同説明会は、立証戦争における残虐行為で拘束された犯罪者がサルム家からアマター自治領へ引き渡されることも明らかにした。サルム家が奴隷商人オルロン・ザシェフにフロセスウィン4教化を依頼したという噂もあったが、ザシェフは引き渡しリストの筆頭に挙げられており、噂は完全に否定された形だ。この噂について質問したスコープの特派員は、オラカル・ゼル・サルム卿の「冷ややかな軽蔑」を目撃している。
「帝国の敵によって広められたあからさまなプロパガンダだ。アマーに忠実な者であれば、そのような話には一瞬たりとも耳を貸さないだろう。サルム家による惑星の全面教化は、誰かに恐怖を与えるようなものではない。アマー帝国について語られた嘘とは違って、我々は社会を破壊することなく、構築しながら生まれ変わらせることを目指している。裏切者にして犯罪者であるザシェフは、古くから伝わる法律を数多く破った。その中には正義の戦いに関する定めも含まれている。あの男はアマター自治領の帝国臣民ならびに民間人へ邪悪な残虐行為を働いた。まずはその罪に対して最初の罰が下されることは確実だ」
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