フロセスウィン4の占領続く YC122年の始まりはインナーサークル停戦協議から
2020-01-07 16:31 スコープ、リナ・アンバー
◆アマー義勇軍が重要星系を再奪還、フロセスウィン4の占領続く
メトロポリス、フロセスウィン発-フロセスウィン4の南半球で悪天候が続き、戦闘はやや落ち着きを見せているが、アマー軍は依然として南部大陸を占領下に置いている。ミンマター海軍は部族解放軍とカプセラに援護されて制宙権を回復、地上部隊が惑星北部の人口稠密な地域を解放・防衛しているものの、サルム家遠征部隊も南部で塹壕陣地を構築し、後退する気配を見せない。
強力な防御設備、地対宙防衛システム、そして雨季の始まり。三重の盾に守られたサルム家部隊は南部の人口密集地をすべて掌握しており、500万から700万のミンマター市民が占領軍の支配下にあると言われている。遠征部隊を指揮するビクトル・マザリ将軍は、フロセスウィン4侵攻後、アマー軍が星系を支配した20日のあいだに約15万人の「犯罪者と捕虜」を惑星外へ移送したと主張した。
アマー軍がフロセスウィン4へ大量破壊兵器を持ちこんだという噂について、マザリ将軍は南部大陸主都ポート・クルで記者会見を開き、疑惑を一蹴した。
「核兵器や化学兵器などという話は、我々の敵による汚いプロパガンダです。アマシュ・アクラの法は地を毒する武器を使うことを禁じております。このような訴えは、むしろ敵のお粗末さを際立たせるものだと言えましょう。思い出していただきたい。ミンマター人を滅びの炎から救ったのは我々だということを。彼らは核戦争によって自滅してもおかしくなかったが、今なお、そのような兵器を使っています。我らアマーは地を毒することなく、聖なる光によって浄化するのです」
アマー軍は占領地域の防御設備を動かすため、動力源として反物質炉を使用しており、記者からは炉がオーバーロードして死と破壊を撒き散らしはしないかという質問が飛んだ。マザリ将軍はそのような可能性を否定し、「中傷じみたデタラメ、我々が一顧だにしない敗北主義的思考」だと評した。一方ミンマターの地上指揮官たちは、アマー軍が反物質炉を人口密集地の只中に設置したとの報告を受け、意図的にせよ戦闘での事故にせよ、炉が破損するリスクを深刻に受け止めているものと見られている。
他のアマー・ミンマター紛争宙域では、第24次帝国十字軍がいくつかの勝利を挙げ、複数の星系で勢力を盛り返した。サルム家は当主アラハ・サルムの代理人としてオラカル・ゼル・サルム卿がメッセージを発し、同家が命じたオーザッド星系奪還が達成されたことを歓迎。また、フロセスウィン戦線の戦況にとって重要なのが、アマー義勇軍がカーニアイネン星系とイスブラバタ星系を奪還したことである。これによってミンマターの優位は衰え、サルム家部隊はより柔軟に補給を受けられるようになった。ミンマター海軍がフロセスウィン星系の制宙権を握って以来、兵員や物資、それに「捕虜」の大規模な移動は阻止されているものの、アマーはアセト、ユイスパ、ビメイニ星系の補給基地から封鎖突破型輸送艦などの準主力艦を送りこみ、遠征部隊へ補給物資を投下し続けている。
◆インナーサークル停戦協議は義勇兵法の改正と経済正常化を狙う
ジェネシス、ユーライ発-アマーによるフロセスウィン4侵攻など、紛争宙域で地上戦が相次いでいることを受けて、四大国は停戦協議を行っている。年明け早々に再開された協議は、ユーライ合意、ユーライ協定、YC110年CONCORD緊急義勇兵戦争権限法が相互に作用することで生じた抜け穴の解消を目指している。CONCORDでの交渉と並行して、ジャックス・ローデン大統領とハミデ・カドール女候、カーラキオタ・スクーベスタ共同代表団とアラハ・サルム卿といった各国高官も会談。インナーサークルはこれらの結果をもとに、現在進行中の紛争のさらなる激化を防ぎ、衝突を解決にみちびく方向で話し合いを進める模様だ。
アマー帝国代表のサーダン・ゼル・クオシュ元帥は、星間貿易が「正常化され、ユーライ協定とユーライ合意にもとづく状態に復帰しなければならない。賢明なことに、両協約はCONCORD構成国に対する一方的かつ無制限の制裁を禁じている」と発言。ガレンテ連邦代表のデヴァン・マレートは、「ユーライ協定にもとづく管轄権あるいは請求権を持たない外国派遣部隊を惑星その他から撤退させる」ことを引き換え条件として、アマーの主張に同意した。ガレンテとミンマターはYC120年後半のカハー騒乱以来、アマーに対して広範な経済制裁を課してきた。だが、女帝カティズ1世の代理人たるカドール女候とローデン大統領が会談した結果、ガレンテは大幅に態度を軟化させたようだ。
カルダリ連合では、カティズ1世がカルダリ・アマー経済活性化協定の債券償還スケジュールを延期することに同意したとの報道があり、カルダリ企業は支払いにむけて確保していた数兆iskを活用することが可能になった。皇宮消息筋は、サルム家の銀行やタッシュムーコン家の投資ファンドが女帝の個人的要請を受けてリスケに応じたのだろうと指摘している。カルダリ企業はこの機に大規模な取引や投資を行うのではないかと期待されており、カルダリ全体が「平和のための貿易」を強く支持している。
ミンマター共和国ではサンマター・マレアツ・シャコールがアマーに外交的敗北を喫したと批判する声もあるが、共和国指導部はフロセスウィン4で捕らわれた15万人のミンマター市民が奴隷化されず、あくまで捕虜として扱われている点を強調。インナーサークル・ミンマター代表のケイタン・ユンは、「我々はガレンテ連邦の支援を受けて交渉に参加した。いわゆる『労働力化』が止まったのは、その直接的結果である」と国内向けに主張している。
ユン代表は、さらに次のようにコメントした。
「アマー帝国ならびに従属国は違法に奴隷を使役し、民間人に対して残忍な弾圧行為を働いている。ユーライ協定とユーライ合意のもと、これらの国家へ特定の制裁を課す権利をミンマター共和国が維持するのは明らかである。この権利はアマー自身が承認した条項にもとづいており、彼らが異議を唱えることはできないはずだ。また、連邦は紛争宙域の惑星住民を保護するために思慮深い改革を推し進めているが、我々はこれに反対しない」
インナーサークルが停戦協議を続ける一方で、CONCORD紛争監視局は混迷するフロセスウィン4への人道支援活動を促し、状況の安定化につなげるよう要請している。
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