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ただのゲームではない…EVE Onlineと現実世界のつながり
2020-01-21 – By CCP Clover

EVEで育まれた友情がコミュニティに良い影響を与えているのは明白な事実です。私たちは「EVE Onlineが現実世界に与える影響」を題材に社会学の修士論文を著した、アルノール・マクシミリアンと連絡をとることができました。彼の素晴らしい研究成果をカプセラの皆さんと共有したいと思います。

皆さんご存知のように、「コンピューターゲームは全体的にネガティブな影響を与える」という意見は社会にかなり浸透しています。ゲームは学校の成績に悪影響を与え、プレイヤーの時間を浪費し、人々を想像の世界に閉じこめるものだと見なされているのです。しかし、そういった意見が想定しているゲームとは、プレイヤーの行動が現実世界に何ら影響せず、いかなる結果も生まないという前提に基づいています。この研究論文は、そのような意見に反証し、EVE Onlineと現実世界のあいだの否定しえないつながりを明らかにすることを目的としています。研究に際しては、複数のベテランEVE Onlineプレイヤーに詳細なインタビューを行い、インタビュー内容をブルデューの社会学理論である実践理論にもとづいて符号化する、社会学的質的研究手法を用いました。

ビデオゲームは他の現代メディアと同じく、年月を重ねるあいだに劇的に変化してきました。過去のコンピューターゲームのナラティブ性はシンプルで、プレイヤーがストーリーに影響を与える余地がなかったため、単純に映画や文学と同じようなものとして分類されていました。例えば、アタリ社が1972年に開発した「ポン」は、小さな四角形を相手側に打ちこんでポイントを得るという非常にシンプルなゲームでした。このゲームに適用される唯一のルールは、一般ユーザーには変えることのできないゲーム自体のコードにもとづいています。この事実が仮想世界と現実世界の乖離を決定づけていました。現実世界が仮想世界より複雑なのは、人々がさまざまな状況にどんな反応や行動を示すか予測できないからです。普通の人々は映画やビデオゲームの住人のように台本どおり動いたりせず、社会的ルールに従って複雑かつ予測不可能な行動をとります。そして、社会的ルールとは社会構造の中で常に変化し、形を変えるものです。

一気に現代まで話を進めると、今やビデオゲームはオンラインゲームとなり、複雑な社会的ルールを持つ人々で満ちています。仮想世界と現実世界を隔てていた違いがすっかり無くなってしまったわけです。どんな風にゲームを遊ぶのか、どうやって勝利を得るのか、どのように目標を達成するのか、プレイ方法は千差万別です。インタビューでは、プレイヤーごとに異なる多様なゲーム目標を確認できました。あるプレイヤーがアステロイド採掘に関することを目標にしているかと思えば、別のプレイヤーは大規模ないし小規模な海賊団を率いることを目指し、他のプレイヤーはマーケットや産業活動を見据えているといった具合です。時には、ただ友人や敵を作ることを求めているプレイヤーもいました。そのような目標でさえ他の目標同様に努力が必要とされますが、現実世界のスキルが目標達成の助けになるケースもあります。

プレイヤーは現実世界のスキルを利用し、仮想世界のゲームプレイで優位に立つことができるのです。こういったスキルはブルデューの実践理論で考証され、社会関係資本、経済資本、文化資本、そして象徴資本と呼ばれています。ここで言う資本とは、人々が生活の中でアクセスでき、私たちの思考や言動を制御する「ハビトゥス」の形成に関わるもののことです。分かりやすく言えば、家族や友人、性別、教育、地理、学校、仕事などの環境から生じる、人生経験の産物を指しています。インタビューではこれらの資本を分析し、外的資本と内的資本に分類しました。この2種類のカテゴリーは現実世界とEVE Onlineのつながりを構築する主要概念です。外的資本は現実世界のリソースを、内的資本はゲーム内のリソースを指し、プレイヤーはこれらを使ってゲーム内の世界とゲームプレイに影響を与えることができます。外的社会関係資本の利用例を一つ挙げるなら、現実世界の友人とEVE Onlineをプレイする行為です。そのプレイヤーは友人とプレイしない他プレイヤーよりも有利だと言えます。もちろん、友人の有無はゲームの決定的な要素ではなく、小さなアドバンテージの一例に過ぎません。プレイヤーはそのアドバンテージに気付きもせず、ただ誰かと一緒に遊び、社会的欲求を満たしたいだけかもしれません。仮にそうであったとしても、その場合の「誰かと一緒に遊び、社会的欲求を満たす」という目標が達成されるか否かは、プレイヤーの現実世界における社会関係資本に大きく左右されるのです。

多くの場合、プレイヤーはEVE Onlineの一番面白いところを社会的経験だと考えています。インタビュー対象者は、一緒に遊んだプレイヤーを「ただ船の上に表示されている名前」とは見なしていませんでした。他のプレイヤーは実在する人々として認識され、彼らは真剣に相手をしてきたのです。多くのプレイヤーが何年もかけて、親密な本物の関係を築きました。以下にあるプレイヤーの経験談を引用します。

“私たちは本当に良い友人をたくさん作りました。純粋に素晴らしいことです。毎日は会えないかもしれませんが、いつでもつながりがあります。あなたと、あなたが出会ったプレイヤーのあいだには、絆があるんです。EVEが私たちを結びつけてくれます。…特に思い出深いのは、ある年のクリスマスです。私たちはスカイプで喋りながら、ずっと何時間もEVEをプレイしました。人生で最高に楽しい経験の一つでした。…みんな色々なことを共有し、お互いを助け合いました。私には仲間が何よりも大事だったんです。”

プレイヤーがEVE Onlineをプレイし続ける主な理由は、かなりの割合が「他のプレイヤーの存在」でした。EVE Onlineというゲームは、プレイヤーが望むかぎり、彼らの仮想社会生活や内的社会関係資本を維持する接着剤として機能したのです。さらに、内的社会関係資本が仮想世界の枠にとどまらないこともあります。すべてのインタビュー対象者は現実世界でも友情を育んでおり、外国を旅行した際に友人宅へ泊まったプレイヤーのように、友情が経済的利益をもたらしたケースもありました。極端な例を挙げれば、友情を強めたプレイヤー同士が結婚したケースまであります。

2番目の資本は経済資本です。これはISKと呼ばれるゲーム内通貨と現実世界の通貨で構成されます。インタビュー対象者は内的・外的な経済資本に関して、いくつかの側面から論じました。一つの側面はゲーム内アイテムを実在通貨で販売する人々と、それを購入する人々についてです。しかし、こういった行為はほとんどのビデオゲームで厳しく禁じられており、処分は免れません。もう一つの側面は非常にシンプルで、CCPを通じて実在通貨をゲームタイムやその他の利益と交換することについてでした。

3番目の資本は文化資本です。これはプレイヤーがどんな行動を取り、どのような人々と一緒に遊ぶのを好むかという観点から分析しました。大半のプレイヤーは同じ言語を話すプレイヤーと遊んでいますが、言語以外でも国籍の違いによる差異が観測できます。正しい事と間違っている事、特定の状況で取るべき行動、社会的に容認されている事とタブー視されている事。プレイヤーは国籍によって異なった社会的ルールを持ちえます。また、プレイヤーの現実世界における人格がゲーム内へ変換され、どのような集団へ参加するのか選択に影響する可能性もあります。現実世界へネガティブあるいはポジティブな影響を及ぼしうる点では、この資本も他と同じです。どんなプレイヤーと遊ぶかという選択は、単なる考え方の問題にとどまりません。

4番目の資本は象徴資本です。この資本はプレイヤーあるいはプレイヤー集団がゲーム内で認知されたり、何かしらの行動で有名になったりした場合に生じます。ただし、彼らの評判は見る人によってネガティブにもポジティブにもなりえます。また、象徴資本はゲーム外まで影響力を発揮することがあり、一部のプレイヤーは現実世界でも知られるようになりました。逆にゲーム内へ持ちこまれた外的象徴資本に言及したインタビュー対象者もいます。有名人がEVE Onlineをプレイし始めると、その事実がすぐに知れわたり、コミュニティは注意を払うようになるのです。

論文はEVE onlineと現実世界がプレイヤーの行動を通してどのように結びつけられているか述べ、最終結論としました。…プレイヤーはゲームをプレイすることで内的資本と外的資本を利用し、仮想世界と現実世界に大きな影響を及ぼす能力を持っています。その素晴らしい例の一つがEVEファンフェストです。この大規模イベントはアイスランドの現実社会に極めてポジティブな影響をもたらしますが、EVE Onlineの仮想世界とプレイヤーが持つ影響力が無ければ実現できないのです。結局のところ、多くのプレイヤーが何年にもわたってEVE Onlineを人生の一部としてきました。彼らはゲームを通じて本物の社会的なつながりを作り上げ、それを現実世界に持ち出すこともあれば、持ち出さないこともありました。しかしいずれにせよ、プレイヤーとその周囲の人々にとって、EVE onlineはただのゲームではないのです。

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